令和4年度流通・物流の効率化・付加価値創出に係る基盤構築事業(流通業の新しいビジネスモデルの実践に向けた国内外事例分析・環境調査)に関する調査報告書
報告書概要
この報告は、流通・物流の効率化と付加価値創出に向けた基盤構築事業として、流通業の新しいビジネスモデルの実践に関する国内外事例分析・環境調査について書かれた報告書である。
小売・卸売の流通業は、内需縮小や競争激化による売上確保の困難、原材料費・燃料費・物流コストの高騰、人手不足の深刻化等により、既存の店舗運営モデルの限界に直面している。こうした厳しい環境下で事業を存続させるためには、従来の延長線上にない新しいビジネスモデルの構築が必要である。
コロナ禍によりデジタルトランスフォーメーションが注目を集め、国内でも様々な取組が行われている。特に諸外国では、単なる物販を超えた新たな収益源の獲得、サプライチェーンの再構築、サステナビリティへの対応等による付加価値向上といった新しいビジネスモデルが実践され、成果を上げている事例が存在する。
調査では、国内外の流通企業による新しいビジネスモデル事例を調査し、今後の国内普及に向けた課題や成功要因を把握することを目的とした。新たな収益源獲得の方法として、販売方法の多様化、データマネタイズ、サプライチェーン上の拡張、サプライチェーン外への進出、RaaSの5つに分類している。また、資金調達環境やビジネス環境についても調査を実施した。
調査結果から、新たなビジネスモデルの事例は増加しており、中小規模小売業にとっても取組を検討する素地ができつつある状況が明らかとなった。消費者にとっても新しい消費体験として受容が高まっており、企業サイズに関係なく転換判断が差し迫っている。しかし、地域金融機関による流通業への特化した支援は十分でなく、中小規模小売業単独での新たなビジネスモデル実践は困難である。そのため、同業・異業種提携の促進、補助金利用促進、地域特性を加味した情報提供が重要であり、政府主導による地域サプライチェーン連携体の形成が求められている。
