令和4年度商取引・サービス環境の適正化に係る事業(スポーツ産業に関する諸外国の動向調査事業)調査報告書

掲載日: 2023年8月25日
委託元: 経済産業省
担当課室: 商務・サービスグループサービス政策課 スポーツ産業室
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令和4年度商取引・サービス環境の適正化に係る事業(スポーツ産業に関する諸外国の動向調査事業)調査報告書のサムネイル

報告書概要

この報告は、スポーツ産業の収益構造と資金循環について書かれた報告書である。

アメリカ主要リーグや欧州サッカーリーグにおいて、放映権収益が最大の収益源となっており、IT企業の市場参入により放映権料は年々高騰している。プレミアリーグでは東南アジア視聴者獲得のための試合時間変更や競争入札制度導入により海外放映権収益を拡大している。スポンサー収益についてはテクノロジー企業とのパートナーシップ増加が主要因となっている。データライツやデジタル資産を活用した新たな収益源も注目されているが、従来の三大収益源に匹敵する規模には至っていない。

スタジアム・アリーナ建設においては、アメリカで公的資金投入割合が減少傾向にあり、民間資金活用が増加している。ネーミングライツが重要な資金調達手法として定着し、約8割のチームが契約を締結している。単年度収支での黒字化は困難であるため、周辺地域への経済効果を含めた投資判断が行われている。収益多角化と定常的収益確保が安定運営の鍵となっている。

女子スポーツ分野では、欧米女子サッカーの観客数・視聴者数が顕著に増加している。最大の収益源はスポンサー収益であり、男女平等の社会的機運の高まりが企業パートナーシップ増加の背景となっている。放映権契約締結や女子アスリートのSNS発信によるメディア露出拡大も成長要因である。

アウトドアスポーツでは、スキー市場が成熟期を迎え、欧米観光地ではデジタル化推進やアフタースキーアクティビティ充実、通年誘客による顧客確保を図っている。ウォータースポーツ・アーバンスポーツは競技者人口が増加傾向にあり、特にコロナ禍で拡大した。

資金循環の分析では、アメリカのNFLやNBAにおいてレベニューシェアによるリーグ分配金がチーム最大の収益源となっている。支出の大半はサービス拡大・拡充に充てられ、選手人件費が最大項目である。同時にスポーツ普及・振興への資金拠出も行われている。イギリスでは国営くじ収益の一定割合をスポーツ振興に割り当てる仕組みが整備されている。ドイツではスポーツフェラインと呼ばれる非営利スポーツクラブが普及・振興を担う独特のシステムが文化として定着している。