令和4年度エネルギー需給構造高度化対策に関する調査等事業(国内外における水素・燃料電池に関する動向及び利活用可能性調査)報告書
報告書概要
この報告は、日本の水素社会実現に向けた国内外の動向と利活用可能性について書かれた報告書である。
日本は一次エネルギーの約9割を海外由来の化石燃料に依存しており、エネルギー安全保障の確保と温室効果ガス削減の両立が重要な課題となっている。2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、水素は発電・産業・運輸など幅広い分野で活用されるキーテクノロジーとして位置付けられており、自動車用途だけでなく多様なプレーヤーを巻き込んだ取り組みが必要である。
グローバルな水素需要について、Hydrogen Councilの試算によると、2030年の水素需要は140百万トンに拡大し、そのうち75百万トンがクリーン水素の需要ポテンシャルとされている。新規需要としてはモビリティ、発電、製鉄、熱利用が大きな需要を創出するシナリオが示されている。2050年には水素需要が660百万トンに達し、これは最終エネルギー消費量の22%に相当すると予想されている。
水素供給ミックスの変化では、2030年断面でグレー水素の約3割が低炭素水素・再生可能水素に転換され、2050年にはグレー水素がフェードアウトし、再生可能水素が6割から8割を占める見通しである。発表済み計画に基づくクリーン水素供給量は2030年に18.2百万トンとされ、大半の生産地は欧州とオセアニアである。
国内における水素社会実現に向けては、製造から貯蔵・輸送、利用まで一気通貫した水素サプライチェーンの構築が重要であり、特に商用車分野では燃料電池車の導入促進とインフラ整備が課題となっている。委員からは規制緩和、補助制度の充実、炭素税やカーボンプライシングの導入による公平な費用負担、水素ステーションの最適配置などが提案されている。
