令和4年度エネルギー需給構造高度化対策に関する調査等事業(競争的な水素サプライチェーン構築に向けた水素コスト分析に関する調査)報告書

掲載日: 2023年9月1日
委託元: 経済産業省
担当課室: 資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部新エネルギーシステム課水素・燃料電池戦略室
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令和4年度エネルギー需給構造高度化対策に関する調査等事業(競争的な水素サプライチェーン構築に向けた水素コスト分析に関する調査)報告書のサムネイル

報告書概要

この報告は、競争的な水素サプライチェーン構築に向けた水素コスト分析について書かれた報告書である。

本調査では、水素の輸入チェーンと国産チェーンの類型化を行い、Well to Gate(WtG)からWell to Tank(WtT)まで の全体的な水素コストを分析している。輸入チェーンでは、天然ガス水蒸気改質、褐炭ガス化、水電解による水素製造を前提とし、液化水素、MCH(メチルシクロヘキサン)、アンモニア、合成メタンによる輸送・貯蔵を検討している。国産チェーンについては、天然ガス水蒸気改質、石炭ガス化、水電解による製造と、液化水素、高圧水素、MCHによる国内配送システムを対象としている。

事業者ヒアリングに基づく詳細なコスト試算を実施し、均等化製品コストの概念を用いて水素のコスト構造を分析している。輸入の場合、水素製造コストが全体の約6-8割を占め、輸送・貯蔵コストが2-4割程度となっている。水電解による水素製造では、設備利用率と再生可能エネルギー電力コストが大きく影響し、褐炭ガス化や天然ガス改質と比較して現状では高コストとなっている。

水素の非化石価値の顕在化について、各国のCO2排出量測定方法を調査している。EUタクソノミー、CertifHy、豪州の水素原産地証明制度、英国・米国の低炭素水素基準、IPHEの測定方法論などを詳細に分析し、それぞれのシステムバウンダリと閾値の違いを整理している。これらの制度は、水素のライフサイクル全体でのCO2排出量を評価し、低炭素水素やグリーン水素の認証基準を定めている。

サプライチェーンのCO2排出量について定量分析を実施し、製造工程別の炭素強度(CI)を算出している。水電解による水素製造では、使用する電力の炭素強度により大きく変動し、再生可能エネルギーを使用した場合は大幅にCO2排出量を削減できることが明らかとなっている。一方、化石燃料由来の水素では、CCS(炭素回収・貯留)技術の導入により排出量削減が可能である。

大規模サプライチェーン構築の課題として、保安・安全関連規制について事業者アンケート調査を実施している。水素の取扱いに関する技術基準、設備の設置・維持管理基準、輸送・貯蔵に関する規制などが主要な課題として挙げられている。また、欧州と米国における技術開発・プロジェクトの進捗状況を調査し、水素製造・輸送・貯蔵技術の開発動向と目標設定を整理している。これらの調査結果から、競争的な水素サプライチェーン構築に向けた技術開発の方向性と政策的な取り組みの必要性が示されている。