令和4年度質の高いエネルギーインフラの海外展開に向けた事業実施可能性調査事業委託費(サウジアラビア国・酸性ガス処理技術活用型二酸化炭素回収/貯蔵事業実施可能性調査事業)報告書

掲載日: 2023年9月1日
委託元: 経済産業省
担当課室: 貿易経済協力局貿易振興課資源エネルギー庁資源・燃料部石油・天然ガス課
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令和4年度質の高いエネルギーインフラの海外展開に向けた事業実施可能性調査事業委託費(サウジアラビア国・酸性ガス処理技術活用型二酸化炭素回収/貯蔵事業実施可能性調査事業)報告書のサムネイル

報告書概要

この報告は、サウジアラビア国における酸性ガス処理技術を活用した二酸化炭素回収・貯蔵事業の実施可能性について書かれた報告書である。サウジアラビアは世界第9位のCO2排出国であり、2060年のネットゼロ目標を掲げているが、基幹産業である石油・ガス業界の増産により環境負荷が高まる懸念がある。本調査では、東洋エンジニアリングと8Rivers社が開発したTarTプロセス技術を用いて、高濃度酸性ガスの精製と同時にCO2を液化回収する一気通貫事業の実現可能性を検証した。

TarTプロセスは従来技術に比べて安価にCO2を液化回収できる技術であり、CCS全体のコスト削減に寄与することが期待される。調査では、サウジアラビアのエネルギー開発現状、CCS関連プロジェクト、投資環境について分析を行い、3つのケース(ベースケース、高濃度CO2/硫化水素ケース、C2 Rejectionケース)で概念設計を実施した。

経済性分析の結果、目標エクイティIRRを満たすサワーガス処理単価は2.5~4.8米ドル/mmbtuと算出され、天然ガス市場価格の水準内に収まることから競争力のある提案が可能である。CO2回収量は年間約64万トンと試算された。現地パートナー企業との協議を通じて技術・商務両面の課題を整理し、2023年度からの実証試験開始、2029年度以降の商業運転開始を想定したスケジュールを策定した。事業実施体制として三井物産が投資主体、東洋エンジニアリングが設計・建設、8Rivers社が技術ライセンサーとなる体制を想定している。本事業はサウジアラビアの脱炭素政策達成と継続的エネルギー供給の両立に寄与し、世界規模でのエネルギー分野の安定性向上にも貢献する意義深い事業となる。