令和4年度化学物質安全対策(毒性発現予測システムの活用促進に向けた課題等の調査)調査報告書
報告書概要
この報告書は、令和4年度に実施された化学物質安全対策として、毒性発現予測システムAI-SHIPSの活用促進に向けた課題等の調査について書かれた報告書である。調査は国立大学法人奈良先端科学技術大学院大学とみずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社が共同で実施した。
化学物質の安全性評価は従来、動物実験による反復投与毒性試験で行われてきたが、高額な費用や時間、動物愛護の観点から代替手法の開発が進められている。日本では経済産業省主導で平成29年度から5カ年計画により、化学構造、体内動態、インビトロ試験データ、インビボデータ間の関連性をモデル化し、毒性発現機序情報を提示可能な毒性発現予測システムAI-SHIPSが開発された。
本調査では、AI-SHIPSの活用促進に向けた課題を調査分析し、普及のための対応策とアクションプランを検討した。化学産業を始め幅広い分野の事業者に対してシステムを広報し、DVD配布やインターネット経由でのアクセス、デモンストレーションを通じて実際にシステムを試用してもらい、操作性や適用性について評価結果をフィードバックしてもらった。調査は2段階で実施され、第一段階では開発事業のコンソーシアムメンバー18社を対象とし、第二段階では対象を拡大して業界団体を含む関係者に調査を行った。
また、国内外の類似システムとの連携可能性についても調査が実施された。調査対象はOECD(Q)SAR Toolbox、米国環境保護庁のNAMプロジェクト、欧州のRisk HUNT3R、HESS等であり、連携に求められるシステム仕様や連携方法、必要な手続きについて調査された。欧州では複数の大規模プロジェクトが進行しており、ONTOX、PrecisionToxなどが化学物質の毒性予測に関する革新的なアプローチを開発している。これらの調査結果を踏まえ、本システムの普及促進と国際連携に向けた具体的なアクションプランが検討された。
