令和4年度化学物質安全対策 大学・公的研究機関と連携した化学物質管理高度化推進事業 経口暴露による魚類の化学物質蓄積性と経鰓暴露との関連性 調査報告書
報告書概要
この報告は、魚類における化学物質の経口暴露による蓄積性と経鰓暴露との関連性について書かれた研究報告書である。令和4年度に鹿児島大学水産学部が実施した本研究では、logKow5以下の物質を対象として、化審法における餌料投与法による経口濃縮性の検証を行った。対象物質は多環芳香族炭化水素類、農薬類、紫外線吸収剤類の3グループ合計18種を選定し、コイを用いた経口暴露試験を実施した。多環芳香族炭化水素類では、フェナントレンとその派生物において多少高い蓄積性が観察され、低濃度区では高蓄積性の指標であるBMF値0.007を超えるものも確認された。一方、農薬類については体内濃度がほぼ検出限界以下となり、現在使用されている農薬類の経口蓄積性は低いことが示された。紫外線吸収剤類についても、検出された物質の体内濃度は低く、BMF値は0.007の10倍から100倍以上低い値を示した。logKowとBMFとの間には明瞭な相関関係は観察されず、経口濃縮性には物質構造や体内での分解性などの要因が関与している可能性が示唆された。今後の課題として、複数生物種でのBMF比較により化学物質の経口濃縮性に対する理解を深める必要があるとした。
