令和4年度重要技術管理体制強化事業成果報告書 我が国におけるX線CTを用いたCPE体制構築可能性調査
報告書概要
この報告は、X線CTを活用したサイバー・フィジカル・エンジニアリング(CPE)技術の体制構築について書かれた報告書である。
サイバー・フィジカル・エンジニアリング技術研究組合が令和4年度に実施した重要技術管理体制強化事業の成果をまとめている。本事業では、技術進歩の著しい中国製電気自動車を対象として、X線CTによる三次元計測と材料分析を組み合わせたリバースエンジニアリングを実施し、得られたデータを基にCAEシミュレーションモデルの作製および検証を行った。また、海外先行技術との比較による技術動向把握も実施している。
実施内容は三つの柱から構成されている。第一に、X線CTと光学系スキャナーを用いた製品構造や電気配線等の計測、分解による個別部品の材料分析および半導体分析、CAE用データベース管理手法の検討である。第二に、衝突解析やEMC解析等のCAEモデル化とシミュレーション、主要コンポーネンツのBOM分析である。第三に、我が国におけるCAEサービス提供の仕組みおよびX線CTを用いたCPE体制構築可能性の検討である。
主要な成果として、光学スキャンとX線CT計測の組み合わせによるCADデータ作成技術の確立、中国製電気自動車の分解とデータ化プロセスの効率化、リバースエンジニアリングの簡便化と自動化への道筋が示された。さらに、CPE技術を活用した新しい価値創出によるビジネス展開を目的とした委員会を設立し、七回の会議を通じてトップダウン式とボトムアップ式の両方向からビジネスモデルを検討している。
技術流出対策に関する重要な知見として、X線CTによる形状情報は技術的に秘匿が困難であること、しかし材料分析や機械的性質、製造プロセス、設計コンセプトなどは別途分析が必要であることが明らかになった。これらの成果により、CPE技術の現時点での課題と今後の方向性が明確になり、我が国製造業の設計生産情報の新展開および安全保障上のリバースエンジニアリング対策に資する基盤技術が構築された。
