令和4年度二国間クレジット取得等のためのインフラ整備調査事業(市場メカニズム交渉等に係る国際動向調査)報告書(英語版)
報告書概要
この報告は、パリ協定第6条の市場メカニズム交渉に関する国際動向について書かれた報告書である。2021年11月のCOP26でパリ協定第6条の実施規則が採択されるまでの長期にわたる交渉過程と、その後の技術的検討状況について詳細に分析している。
第6条は協力アプローチ、第6.4メカニズム、非市場アプローチの3つの措置を規定しており、2016年のCOP22以降、実施規則の策定に向けた議論が続けられてきた。しかし各国間の政治的対立と技術的複雑性により、当初予定されていた2018年のCOP24での採択は実現せず、2019年のCOP25でも合意に至らなかった。新型コロナウイルス感染症の影響でCOP26が延期される中、各国は閣僚級協議や技術的議論を重ね、最終的に2021年のCOP26で実施規則が採択された。
COP27では第6条に関する技術的知見に基づく決定が採択され、第6条の完全実施に向けた制度的整備が着実に進められている。特に第6.2条のレジストリに関する技術的作業では、各国のレジストリ間の相互運用性やデータ交換の仕組みについて詳細な検討が行われている。
報告書はまた、企業による自主的クレジットの利用拡大や、米国、EU、中国、韓国における市場メカニズムの動向についても調査している。世界銀行の報告では自主的クレジット取引市場の急速な成長が指摘されており、民間企業による温室効果ガス削減への取り組みが活発化している。一方で、クレジットの信頼性確保や二重計上回避などの課題も浮き彫りになっている。
各国の動向では、米国がバイデン政権下でパリ協定復帰と積極的な温暖化対策を実施し、EUが排出量取引制度の拡充を進めている。中国は2021年に世界最大規模の全国排出量取引制度を開始し、韓国は2022年に政権交代により原子力重視へのエネルギー政策転換を図っている。これらの動向は、パリ協定第6条の実施と相互に影響を与えながら、国際的な炭素市場の形成に重要な役割を果たしている。
