令和4年度二国間クレジット取得等のためのインフラ整備調査事業(市場メカニズム交渉等に係る国際動向調査)報告書(日本語版)
報告書概要
この報告は、令和4年度二国間クレジット取得等のためのインフラ整備調査事業として実施された市場メカニズム交渉等に係る国際動向調査について書かれた報告書である。
2021年のCOP26においてパリ協定第6条の実施規則が3年遅れで採択され、2022年のCOP27では技術的な検討結果を踏まえた決定が採択された。これにより第6条の本格的な実施に向けた制度整備が着実に進められている状況が報告されている。報告書は国連における市場メカニズムの動向、国際的な市場メカニズムに影響を与えるその他の動向、海外の市場メカニズムの動向という3つの章で構成されている。
第1章では、パリ協定第6条に規定された協調的アプローチ、第6条4項メカニズム、非市場アプローチの3つの措置について、COP26での合意に至るまでの長期にわたる交渉経緯と技術的な論点が詳述されている。特に各国の政治的対立と技術的複雑さが議論の長期化の原因となったことが分析されている。第6条2項ガイダンスにおけるインフラの規定や登録簿に関する技術的議論の動向についても詳細に検討されている。
第2章では、ボランタリークレジット市場の急激な成長と企業の取組み拡大、炭素除去技術への注目、クレジットの信頼性に関する課題、暗号資産への対応、ホスト国政府の動向などが調査されている。世界銀行報告書による市場成長の報告や、IC-VCMによる取組み、各クレジット発行機関の新しい取組みが紹介されている。
第3章では、米国、EU、中国、韓国における市場メカニズムの具体的動向が調査されている。米国では州レベルでの排出量取引制度の発展、EUではEU ETSの改革と拡大、中国では全国ETSの本格運用開始、韓国では政権交代による政策転換と排出量取引制度の改善が報告されている。各国とも異なるアプローチながら、市場メカニズムを活用した温室効果ガス削減に向けた制度整備を進めている状況である。
