令和4年度産業経済研究委託事業(海外における電力系統の混雑管理に関する調査事業)調査報告書
報告書概要
この報告は、海外における電力系統の混雑管理に関する調査について書かれた報告書である。経済産業省の委託により有限責任監査法人トーマツが実施した調査であり、米国PJM、英国、ドイツ、ノルウェー、スウェーデンの電力系統における混雑管理手法を詳細に分析している。
調査対象国の特徴として、米国PJMは電力需要や系統規模が大きく再生可能エネルギー導入率が低い一方、ノルウェーとスウェーデンは需要規模は小さいが再エネ導入率が高く、英国とドイツはその中間に位置している。系統構造は各国ともメッシュ状であるが、ノルウェーの南北送電線は串状構造となっている。
混雑管理手法については、米国PJMが約13,000のPnodeを持つノーダル制を採用している一方、欧州各国は1から5のゾーン制を採用している。混雑管理費用は米国PJMが9.95億ドルと最も高く、英国4.2億ユーロ、ドイツ4.45億ユーロと続いている。
主な混雑原因として、各国とも再生可能エネルギー導入地域と大需要地間での混雑が発生している。米国PJMでは東海岸の大需要地で集中的に混雑が発生し、欧州各国では風力発電が多い北部から南部の大需要地への送電で混雑が生じている。
系統整備計画では、各国とも再エネ電源の大量導入や老朽化対策を考慮した系統補強を進めており、特に南北間を結ぶ高圧直流送電の新設や既存送電設備の増強が計画されている。ローカル系統や配電系統においても、分散型電源の導入拡大に対応した混雑管理手法の導入が進められている状況である。
