令和4年度新エネルギー等の保安規制高度化事業(水力発電設備における保安高度化推進事業)調査報告書
報告書概要
この報告は、令和4年度新エネルギー等の保安規制高度化事業において水力発電設備における保安高度化推進について検討した調査報告書である。本調査は、FIT制度創設以来増加している水力発電設備の保安管理業務において、デジタル・AI技術の進展を踏まえた点検頻度や項目の見直し、および工事計画書の合理化を図ることを目的としている。調査は学識経験者や電気事業者からなる委員会と作業部会により実施され、令和4年8月から令和5年3月まで各4回の会議を開催した。
主要な検討内容として、外部委託制度の見直しに係る検討では、ダム水路管理技術者が行う点検業務について、スマート機器の導入による点検項目と頻度の最適化を検討した。スマート保安技術として光ファイバーセンサーや赤外線カメラ等の活用により、従来の人的点検を代替する可能性を評価し、水力設備の保安管理における効率化を図った。点検項目については設備別の不具合事象を分析し、標準的な点検内容に対するスマート機器の導入性を検証した。
工事計画書に係る検討では、電気事業法と河川法の申請書類における重複部分の整理を行った。両法令で求められる添付書類について、共用可能なものと電気事業法独自に必要なものを分類し、事業者の負担軽減と審査の効率化を目指した。アンケート調査では複数の事業者から意見を聴取し、図面や計算書の名称統一や内容の簡素化について具体的な改善方向性を検討した。河川法関連書類との共用化については、法令の趣旨を踏まえつつ実務上の負担軽減を図る方策を整理した。
調査結果として、スマート機器の導入により従来の人的点検を部分的に代替できる可能性が示されたが、完全な代替には技術的課題が残ることが明らかとなった。工事計画書については河川法との重複書類の整理により事業者負担の軽減が期待される一方、電気事業法固有の安全確保の観点から必要な書類については従来通りの取扱いが適切であるとの結論に至った。
