令和4年度展示会等のイベント産業高度化推進事業(アート作品の新たな展示モデルに関する実証事業)実施報告書
報告書概要
この報告は、企業が所蔵するアート作品の新たな展示モデルに関する実証事業について書かれた報告書である。
株式会社The Chain Museumが令和4年度に実施した事業で、企業の収蔵庫に眠るアート作品を一般公開し、得られた収益を現代アーティストの活動支援に還元する新しいモデルの創出を目指した。背景として、日本の文化芸術活動を行う企業の約20%が1億円以上の美術品を保有する一方で、その10%程度が活用方法を知らないという課題があった。また、アーティストは制作・発表・保管場所の確保が困難で、美術館は収蔵庫のキャパシティ不足に悩み、海外市場では80号以上の大型作品が求められるという状況であった。
実証事業は3段階で実施された。第1段階では所蔵作品を活用する意欲のある上場企業を募集し、輸出入取引業のA社(約350点所蔵)と電気通信業のB社(約300点所蔵)が参加した。第2段階では簡易査定を実施し、A社の作品総額は約3560万円、B社の25点で約6455万円と評価された。安井曽太郎や梅原龍三郎といった著名作家の貴重な作品も含まれていた。第3段階では「企業コレクションを覗いてみよう展」を開催し、現代アーティスト3名の新作制作費用を支援した。
調査により、企業の作品管理には改善点が多数発見された。作品情報の記録不備、適切な保管環境の欠如、査定に必要な基本情報の欠落などが課題として挙げられた。一方で実証により、企業収蔵作品の現在価値、展示活用による収益化可能性、現代アーティスト支援の高い効果が確認された。今後の展望として、収蔵作品を公開する企業の拡大、現代アーティストの海外展開支援、コレクション以外の企業参加選択肢の提供、専門家との連携強化が提言されている。
