令和4年度技術協力活用型・新興国市場開拓事業(開発途上国における適応分野の制度・事業環境整備事業)最終報告書
報告書概要
この報告は、令和4年度技術協力活用型・新興国市場開拓事業として実施された開発途上国における適応分野の制度・事業環境整備事業について書かれた報告書である。
気候変動による極端な気象災害が経済、社会、インフラに広範囲な影響を及ぼしている背景のもと、温室効果ガス排出抑制の緩和策に加えて、既に生じている気候変動影響への適応策の強化が求められている。特にアフリカやアジアの開発途上国は気候変動の影響を受けやすく、適応関連ビジネスの潜在的市場規模は2050年時点で約50兆円に拡大すると予測されている。しかし、これらの国々では適応に関する政府の基本方針や制度の未整備、適応ビジネス推進に必要な現地人材の不足が障害となっている。
本事業では、気候変動に脆弱なスーダン、インド、ネパール、UAE4か国を選定し、各国の過去の気象災害、国家適応計画、国が決定する貢献の適応記載を分析して適応課題を特定した。スーダンでは乾燥した広大な平原における水資源や農業分野での脆弱性、インドでは多様な気候帯における水資源管理や極端気象への対応、ネパールでは山岳地帯特有の地滑りや氷河湖決壊洪水、UAEでは砂漠気候下での水資源確保や海面上昇対策が主要な適応ニーズとして確認された。
調査では各国の適応ニーズに対して、日本企業が有する優れた技術やサービスをマッピングし、適応ソリューションの提供可能性を評価した。また、企業による適応事業への貢献可能性調査として5件の案件を採択し、ベトナムでの透水性舗装技術、ネパールでのコンポスト製造技術、インドでの斜面対策技術、アジア新興国でのフードロス対策、スーダンでの節水農業技術の実現可能性を検討した。さらに、各対象国における気候変動適応に資するキャパシティビルディングや人材育成プロジェクトを提案し、制度整備支援や技術移転を通じた事業環境整備の方向性を示した。本事業により、日本企業の技術・知識・ノウハウを活用した開発途上国の気候変動適応とグリーン成長への貢献の枠組みが構築された。
