令和4年度原子力産業基盤強化事業委託費(一般産業用工業品の放射線環境下の使用指針の整備事業)事業報告書

掲載日: 2023年10月19日
委託元: 経済産業省
担当課室: 資源エネルギー庁電力・ガス事業部原子力政策課
元の掲載ページ: 掲載元を見る
令和4年度原子力産業基盤強化事業委託費(一般産業用工業品の放射線環境下の使用指針の整備事業)事業報告書のサムネイル

報告書概要

この報告は、原子力施設で使用される一般産業用工業品のセンサ類の放射線環境下での使用指針整備について書かれた報告書である。

原子力施設では多数の一般産業用工業品が使用されているが、これらの製品は放射線環境での使用を想定しておらず、耐放射線性データが不足している。令和2年から施行された品質管理規則により、原子力事業者は一般産業用工業品の技術評価を行う必要があるが、供給者からの耐放射線性情報入手は困難である。この状況により、供給者が原子力向け製品提供を拒否する風潮が広がり、サプライチェーンの劣化が進んでいることが背景となっている。

本事業では、全ての原子力施設に多数存在し、放射線に弱い構成部品であるセンサ類に注目し、光電センサと近接センサを対象として放射線照射試験を実施した。令和4年度は、低照射線量率環境における耐放射線性データの追加取得と、センサ類のカスタマイズ効果の評価を行った。照射試験は、異なる照射線量率、通電状態、入力電圧条件下で実施し、Co-60線源を用いて段階的に照射線量を増加させながらセンサの動作状況を監視した。

試験結果として、光電センサでは照射線量率が高いほど耐放射線性が低下し、通電状態では非通電状態と比較して早期に故障することが確認された。一方、近接センサでは照射線量率による有意な影響は確認されなかったが、入力電圧が高いほど耐放射線性が向上することが判明した。カスタマイズしたセンサ類については、遮蔽体を用いた試験において、解析値と測定値が20%以内で一致することを確認し、遮蔽解析の有効性が示された。

今後の課題として、高線量率領域における通電状態及び入力電圧の影響評価、低線量率領域での追加データ取得、カスタマイズセンサの追加データ取得が挙げられている。これらの研究成果により、原子力事業者等が供給者に依存せずにセンサ類の技術評価を行える使用指針を作成し、サプライチェーンの維持と原子力産業基盤の強化を図ることを目的としている。