令和4年度東北地域のスタートアップにおける成長型中小企業等研究開発支援事業の効果的利活用可能性等調査事業調査報告書
報告書概要
この報告は、東北地域のスタートアップにおける成長型中小企業等研究開発支援事業の効果的利活用可能性等を調査した報告書である。経済産業省が実施するサポイン事業やGo-Tech事業等の研究開発支援制度について、東北管内のJ-Startup TOHOKU選定企業等スタートアップ企業による活用実績はあるものの、成果の普及啓発や最適なマッチング機会創出に課題があることから、本調査事業が実施された。
調査では「研究開発支援事業利活用セミナー事業」と「経営デザインシート研修事業」の2つのモデル事業を実施した。セミナー事業では、エーアイシルクやトライポッドワークス等のJ-Startup企業によるトークセッション、NEDO・日本政策金融公庫・福島県・東北経済産業局・INPITによる施策説明、個別相談会を開催し、104名が申込み93名が参加した。経営デザインシート研修事業では、支援機関職員を対象とした研修と、ロワールや大進プレス工業の事例を交えたスタートアップ向け研修を実施した。
調査により明らかになった東北地域スタートアップの主要課題は、事業拡大・海外展開においてはパートナー企業探索や事業戦略強化、量産化体制構築が挙げられる。知財戦略においては自社の強みの明確化や事業戦略に連動した知財戦略構築が必要である。資金調達ではVCとの接点不足や工場建設・量産化のための資金確保が課題となっている。人材確保では特にエンジニア職採用や経営層人材強化が困難な状況である。
これらの課題に対する支援策として、事業拡大・海外展開ではVCや大企業とのマッチング機会提供とともに、政府の約1兆円のスタートアップ予算を活用した各種支援制度の有効活用促進が求められる。知財戦略では経営デザインシートを活用した知的資産整理や事業計画ブラッシュアップが有効であり、Go-Tech事業申請前の活用が推奨される。資金調達では首都圏でのVC等との個別マッチング機会創出と政府系金融機関の融資制度活用が必要である。人材確保では特に大学発スタートアップにおける経営人材確保支援や首都圏人材との複業兼業マッチング強化が重要である。
今後の効果的な取組として、スタートアップに特化した施策紹介・相談会等の普及啓発事業の継続実施が有効である。Go-Tech事業出資枠等の強力な支援ツールの認知度が低い現状を踏まえ、多様な支援策を比較・相談できる場作りが求められる。仙台スタートアップ・エコシステム推進協議会やテクスタ宮城、aTOP等との有機的連携により、東北管内スタートアップに対する研究開発支援事業等の普及啓発をより効果的に実施することが重要である。
