令和4年度新エネルギー等の保安規制高度化事業(発電用太陽電池設備に関する技術基準適合性調査)報告書

掲載日: 2023年11月9日
委託元: 経済産業省
担当課室: 産業保安グループ電力安全課
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報告書概要

この報告は、土砂災害等の発生が懸念される地域に立地している太陽電池発電設備の安全性や技術基準への適合性について調査した報告書である。経済産業省が令和4年度に実施した新エネルギー等の保安規制高度化事業として、一般社団法人構造耐力評価機構が280件の太陽光発電設備について立入検査を同行し、技術基準適合性を調査した結果をまとめている。

調査の背景として、2012年のFIT制度開始以降、太陽電池発電設備が急速に増加し、設置形態も住宅屋根型から地上設置型、水上設置型、傾斜地設置型など多様化している。しかし、強風や積雪による支持物の損壊、豪雨による土砂流出や地盤崩壊など公衆安全に支障をきたす事例が発生しており、被害低減が重要課題となっている。

調査実施方法として、まず土砂災害等が懸念される地域の設備安全性確認用チェックリスト案を策定した。このチェックリストは建築・土木・構造の非専門家でも使用可能とし、発電用太陽電池設備に関する技術基準を定める省令の適合性について暫定的判断ができる内容とした。設置形態別の細分化も行い、営農型や水上型などの特殊形態にも対応した。立入検査は280件について実施し、そのうち233件を構造耐力評価機構が同行、23件は外注先と共同で実施した。

調査結果の類型化では、太陽電池発電設備の概要別として地域、設置時期、発電規模、土砂災害関連ハザードの有無、地盤傾斜の有無、架台種類、基礎種類で分析を行った。また、立入検査報告書の指摘項目別として設計図書に関する指摘事項と現地調査に関する指摘事項に分類した。設計図書確認では接合部に関する指摘が80%と最も多く、設計荷重の誤りや許容応力度に関する指摘も60%以上であった。現地調査では接合部に関する指摘が61%、腐食に関する指摘が47%、基礎に関する指摘が31%となった。

調査結果から、構造計算書の未整備や不適切な構造計算書、実設備に則していない構造計算書の例が多いことが判明した。特に接合部の検討、設計荷重、許容応力度、基礎の検討項目で指摘が多く見られた。これらの問題を解決するため、全ての太陽電池発電設備において実設備に則し適切に検討された構造計算書の整備が望まれる。また、立入検査においても接合部、腐食、基礎に関する内容で懸念事項が多く確認されたため、これらの箇所に着目した検査が重要であることが示された。