令和4年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(国内スタートアップのアジア等海外展開の加速化に向けた課題調査)最終報告書詳細版
報告書概要
この報告は、日系スタートアップ企業のアジア新興国展開における課題分析と促進支援策について書かれた報告書である。
経済産業省は、アジア新興国のDX・テックビジネス成長を契機として、日系スタートアップ企業と現地企業の共創による新事業創造を支援してきたが、実際の共創事例は十分でない状況が続いている。そこで本調査では、日系スタートアップ企業のアジア新興国展開促進を目的として、企業が直面する課題を把握し、政府に求められる支援内容を明らかにするため、机上調査、アンケート調査、ヒアリング調査、ペルソナ分析、施策調査、起業家育成プログラムの試行実施という6つのアプローチによって調査を実施した。
調査結果として、業種別では社会課題解決型よりも利益追求型のスタートアップ企業が多い傾向があり、創業国では国内創業企業が多い一方で海外創業企業も一定数存在することが確認された。さらに、日系スタートアップ企業がアジア新興国展開において直面する課題は、展開フェーズ別・経営資源別に9つの主要課題に整理された。事業構想フェーズでは現地市場ニーズ・規模の把握不足と事業計画構築力不足、小口資金調達機会の不足が挙げられる。事業実証・PoCフェーズでは海外展開マネジメント人材の不足、現地事業環境の把握・対応困難が課題となっている。事業展開・拡大フェーズでは現地人材の確保・管理困難、信頼できる専門機関の判別困難、マッチング・共創の実現不足、大口資金不足が明らかになった。
これらの課題解消のため、「ADXネットワーク形成支援事業」「ADX人材育成・確保支援事業」「ADX資金調達支援事業」の3つの支援事業が必要であると提言している。具体的には、アジア新興国展開の知見とステークホルダーを集約した知のプラットフォーム構築、展開をリードできる人材育成と現地マネジメント・バックオフィス人材確保支援、優良スタートアップ認定制度を活用した民間・公的資金の流れ加速化が重要な取り組みとなる。また、試行実施した起業家育成プログラムから、アジア新興国企業・VCとの共創による学習効果は高いものの、海外パートナーのコミットメント促進インセンティブ設計が重要であり、プログラム設計時には目的明確化と適切な対象者スクリーニング、終了後のゴール設定が必要であるという教訓が得られた。
