令和4年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(国内スタートアップのアジア等海外展開の加速化に向けた課題調査)最終報告書概要版
報告書概要
この報告は、日系スタートアップのアジア新興国展開の実態と課題について調査した報告書である。経済産業省が2022年度に実施した本調査では、日系スタートアップ166社にアンケートを発出し、40社から回答を得て、海外展開の現状と課題を明らかにした。調査対象は2000年以降に設立された営利法人で日本で創業し、海外現地マーケットを対象としたビジネスを有する企業とした。
調査では展開状況、展開パターン、業種、進出国の4つの観点でスタートアップを分類し、クロス集計により属性別の実態や課題を分析した。また国内外のスタートアップやベンチャーキャピタル、支援機関に対するヒアリングを実施し、課題や支援策の詳細な把握を行った。さらに若手創業者5名を対象としたペルソナ分析により、アジア新興国で成功するために必要なマインドセット、スキル、人脈の特定を試みた。
調査結果として、日系スタートアップがアジア新興国展開時に直面する主要な課題は、情報、人材、資金の3つの領域に整理された。具体的には市場ニーズや規模の把握、事業計画の構築、規制や事業インフラの把握、海外展開マネジメント人材の確保、現地人材の確保、小口資金の調達、事業拡大向け大口資金の確保、専門機関の判別などが挙げられた。
これらの課題に対し、既存の政府施策との比較分析を実施した結果、新規施策の立案ではなく既存施策の強化が必要であることが判明した。具体的にはJETROやAOTSの海外展開コーディネーター人材のキャパシティ強化、グローバル・アクセラレーション・ハブの拡充、Plus Oneの機能強化、日本センターでの人材採用イベントの恒常化、新輸出大国コンソーシアムでの現地専門家マッチング強化などが提案された。
最終的に本報告では、アジア新興国展開促進に向けて3つの支援パッケージを提案している。第1にADXネットワーク形成支援事業として、アジア新興国展開の知見やステークホルダーを集約し知のプラットフォームを実現する。第2にADX人材育成・確保支援事業として、海外展開をリードできる人材育成と現地人材確保を支援する。第3にADX資金調達支援事業として、優良スタートアップにADX認定を与え民間・公的資金の流れを加速化する。これらの施策により日系スタートアップのアジア新興国展開を総合的に支援することを目指している。
