令和4年度商取引・サービス環境の適正化に係る事業(生物多様性総合対策事業)委託事業報告書
報告書概要
この報告は、経済産業省が一般財団法人バイオインダストリー協会に委託した「令和4年度商取引・サービス環境の適正化に係る事業(生物多様性総合対策事業)」について書かれた報告書である。
本事業は、生物多様性条約(CBD)の下での遺伝資源へのアクセスと利益配分(ABS)及び現代のバイオテクノロジーにより改変された生物のバイオセーフティに関連する課題に総合的に対応することを目的として実施された。令和4年度は、新型コロナウィルスの影響により延期されていた生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)が2022年12月にカナダ・モントリオールで開催され、「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択された重要な年であった。
事業の主要な取組みとして、国際会議支援では、デジタル配列情報(DSI)に関する専門的議論を行うタスクフォース委員会を開催し、COP15パート2やポスト2020生物多様性枠組第4回及び第5回公開作業部会、名古屋議定書第4回締約国会合等の重要な国際会議に参加して政府支援を行った。特にDSIの利用から生じる利益の公正かつ衡平な配分については、多国間メカニズムの設置が決定されたものの、具体的な利益配分方法は今後の公開作業部会で検討されることとなった。
遺伝資源に円滑にアクセス・利用できる環境整備では、ABS専用ウェブサイトによる情報発信を継続し、国別情報の最新化やABSに関する基本解説動画の作成を行った。また、COP15報告会をオンラインセミナーで開催し、企業や大学等からの海外遺伝資源へのアクセスに関する相談窓口では31件の相談に対応した。カルタヘナ法執行支援では、オンライン説明会を開催して法律の適切な理解と運用を促進した。
今後の課題として、DSI利益配分に関する国際交渉が複雑化する中で、関連する国内外の動向把握とその的確な分析、国内利用者の円滑な海外遺伝資源アクセスのための環境整備が必要であることが指摘された。本事業の成果は、これらの課題への対応における重要な基盤となるものである。
