令和4年度地球温暖化・資源循環対策等に資する調査委託費(2050年カーボンニュートラルの実現に向けた産学官金連携の推進に係る分析・調査事業)調査報告書
報告書概要
この報告は、2050年カーボンニュートラル実現に向けたGX(グリーン・トランスフォーメーション)人材に関する調査について書かれた報告書である。本調査では、GXをマクロとミクロの二つの視点で捉え、特に個別企業の自社変革である「ミクロのGX」の重要性を指摘している。ミクロのGXには規制対応を目的とした「守りのGX」と脱炭素需要を取り込んだ事業拡大を目指す「攻めのGX」があり、日本企業は両面でのGXに取り組んでいるものの、海外先進企業と比較すると初期段階にある事例が多いとされている。
GX推進における最大の課題は人材ポートフォリオの構築であり、報告書では必要な人材を「グリーン外部情報系(G人材)」と「自社変革系(X人材)」に分類している。G人材はGX特有のルールや技術を深く理解してGX推進をリードする役割を担い、X人材はトップマネジメント、攻めの商品開発・R&D部門、守りの生産・調達部門のミドルマネジメントに分けられる。これらの人材には、パーパス、ルール、技術、ビジネスの四つの側面からなるGXスキルセットが求められている。
欧米では各類型の人材について十分な育成機会と採用マーケットが機能しているが、日本ではプロパー社員が独学で対応する傾向が強く、専門的な育成機会や人材マーケットが不足している状況である。特にG人材については質・量ともに不足しており、X人材についても将来的な限界が予想される。対策として、B2Bリスキリング支援サービスの拡大、政府独自の育成プログラム開発、産学官連携プログラムの提供、G人材育成プログラムの拡充支援という四つの政策手法を組み合わせた多層的な人材育成が提案されている。
