令和4年度地域経済活性化対策調査(企業価値向上等をねらいとした脱炭素経営普及拡大調査)調査報告書(公表版)

掲載日: 2024年1月12日
委託元: 経済産業省
担当課室: 内閣府沖縄総合事務局経済産業部エネルギー・燃料課
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報告書概要

この報告は、沖縄県内企業における脱炭素経営の普及拡大について書かれた報告書である。令和4年度に株式会社エネルギーラボ沖縄が実施した調査により、県内企業20社へのヒアリングを通じて脱炭素経営への取り組み状況と課題を明らかにした。調査対象は製造業、建設業、小売業、エネルギー業、銀行業など多様な業種にわたり、それぞれの企業が直面する課題や効果的な取り組み事例を収集した。

調査結果から、多くの県内企業が脱炭素経営に未着手である状況が判明し、この段階を「Scope0」として新たに定義した。企業が脱炭素経営に踏み出せない主な要因として、グローバルサプライチェーンとの接点が希薄であることや、経営的なメリットが見えにくいことが挙げられた。また、脱炭素への関心はあるものの具体的なアクションに移れない企業が多数存在することも明らかになった。

課題解決策として、行動科学に基づくナッジの活用を検討し、宇都宮大学と電力中央研究所の専門家から知見を得た。ナッジは金銭的投資を抑えながら省エネ行動を促進できる手法であるが、職場環境に応じたカスタマイズや継続的な社内議論が必要であることが分かった。さらに、企業が自社にとって最適な脱炭素アクションを検討できるよう、実践的な手順書と県内外の事例集を作成した。

調査の集大成として2023年3月にシンポジウムを開催し、長野県小布施町、自然電力株式会社、株式会社バガスアップサイクルから講師を招いて事例紹介を行った。一方的な情報発信ではなく、グループディスカッションや意見交換を通じて参加者の理解促進と具体的なアクションイメージの醸成を図った。

提言として、未着手段階の企業への支援制度拡充、切れ目のない支援体制の構築、地域好循環モデルの確立が必要であることを示した。特に沖縄では地域内サプライチェーンが存在するため、一企業の脱炭素経営完遂には多くのステークホルダーの巻き込みが必要であり、産業構造全体の転換が求められる。今後は目指すべき産業構造のビジョンを明確化し、県内産業界全体での共有が重要であるとしている。