令和4年度産業技術調査事業(研究開発投資による無形資産及び産学官連携等における「知」の価値の可視化等に関する委託調査)調査報告書ディープテックスタートアップの評価・連携の手引き
報告書概要
この報告は、ディープテックスタートアップと事業会社の連携促進について書かれた政策報告書である。経済産業省の研究会が、既存産業や社会における巨大かつ根本的な課題解決を目指すディープテックスタートアップの振興に向けて、事業会社との連携のあり方を検討した成果をまとめている。
ディープテックスタートアップは、持続可能な社会環境の実現、社会のDX、ウェルビーイングの促進という三つのビッグアジェンダに取り組む企業として定義されている。これらの企業は、個別技術は研究室レベルで実証されているものの、技術を活用した課題解決に至る事業化の道筋については試行錯誤が必要な段階にある。対象領域には、新素材開発、エネルギー効率向上、AIロボティクス、創薬イノベーション、宇宙開発などが含まれ、国内外で多くの企業が高い評価額を獲得している。
報告書では、事業会社とディープテックスタートアップの連携における現状課題を分析し、あるべき姿を提示している。事業会社側には、トップマネジメントの長期的視点での意思決定と、ミドルマネジメントの実務レベルでの連携促進が求められている。スタートアップ側には、技術の社会実装に向けた事業化戦略の明確化が必要とされている。連携を阻害する要因として、法務面の理解不足や契約交渉での問題が指摘されており、これらに対応するモデル契約書の活用が推奨されている。
政策面では、オープンイノベーション促進税制の拡充により、M&A時の発行済株式取得に対して所得控除25%を適用することで、スタートアップの成長を支援する方向性が示されている。また、大企業人材の出向起業を促進する補助金制度により、新事業開発を後押しする取り組みも実施されている。このような包括的なエコシステム構築を通じて、日本におけるディープテック分野の競争力強化を図ることが目標とされている。
