令和4年度産業技術調査事業(研究開発投資による無形資産及び産学官連携等における「知」の価値の可視化等に関する委託調査)調査報告書産学協創の充実に向けた大学等の「知」の評価・算出のためのハンドブック
報告書概要
この報告は、産学協創における大学等の「知」の価値評価・算出方法について書かれた報告書である。
文部科学省と経済産業省が共同で作成したこのハンドブックは、大学等が企業との共同研究において提供する知的財産・技術・ノウハウ等の無形資産に対して適切な対価を得ることを目的としている。現状では、多くの大学、特に国立大学法人において、産学協創の対価が必要なコストの積算によって決定されており、大学等の「知」の真の価値が適切に評価されていないという課題がある。この結果、1000万円以上の大型共同研究は全体の5.4%にとどまり、組織対組織の産学連携が十分に進展していない状況にある。
本報告書では、大学等が提供し得る「知」やサービスを体系的に整理し、従来の研究実施・マネジメントに加えて、人材育成・ノウハウ供与、社会実装・政策提言への関与、ガバナンス・マネジメント、無形資産の管理・提供といった広範な価値を明示している。価値評価・算出方法として、欧米標準の積み上げ方式、総額方式、成果連動方式の3つのアプローチを提示し、研究者の関与時間への対価やマネジメント費用の算定方法を具体的に示している。
特に重要な視点として、産学協創の対価は需給関係に基づいて価値付けされることが望ましく、大学等は経営体として産学協創で得られた資金を戦略的な再投資に活用すべきであると指摘している。海外大学では、産学協創で得た資金を原資として学生への奨学金支出や研究設備の維持・更新、基礎研究分野への再投資を行っており、このような好循環の実現が日本の大学においても必要とされている。また、ディープテック・エコシステムの形成という観点から、大学発スタートアップや事業会社、投資家等のステークホルダーが共通の価値観の下でコミュニケーションし、互恵関係を構築することの重要性も強調されている。
