令和4年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(グローバル課題の解決に向けた日本の中堅・中小企業と海外企業等との共創に関する調査) 報告書
報告書概要
この報告は、日本の中堅・中小企業と海外企業との共創によるグローバル課題解決に関する調査事業について書かれた報告書である。経済産業省関東経済産業局が委託したこの事業は、アジア地域を中心とする新興国における社会課題解決を通じて、日本企業の海外展開を促進し、現地企業との価値共創型ビジネスの創出を目的としている。従来のコスト削減目的の海外展開から、現地市場のニーズ獲得や社会課題解決に貢献する新たな価値創出へのパラダイムシフトが背景にある。
事業実施においては、マーケットポテンシャル分析手法の確立、コーディネート手法の実装、エコシステムのパイロット形成という三つの基本方針が設定された。対象テーマとして、ベトナムの農業生産性、インドとマレーシアのフードロス、エチオピアの医療アクセスという四分野が選定され、これらは重要度の高い社会課題であり、日本側のシーズと現地側のニーズが両立する蓋然性の高い分野である。現地コーディネータとしてAOTS同窓会やUNIDO東京事務所との協業が図られ、現地企業との効果的なマッチングが実現された。
マーケットポテンシャル分析では、当該セクターの現在市場規模の把握、社会課題による潜在的損失の推計、潜在市場規模の推計という段階的手法が提案された。この分析手法により、社会課題解決型ビジネスの創出を目指す企業の社内意思決定や資金調達の円滑化が期待される。各国でのマッチングイベントでは、日本企業の技術と現地企業のネットワークや市場知識を組み合わせた協業案件が創出された。具体的な成功事例として、メビオール社とベトナムのNext Farm社による農業技術協業、OUI社とエチオピアのSight For Soulsによる眼科診断機器事業、和興フィルターテクノロジー社とタイのBBGI社による精製技術協業が示されている。これらの事例は、技術移転にとどまらず、現地企業との真の価値共創による持続可能なビジネスモデル構築の可能性を実証している。
