令和4年度中堅・中小企業輸出モデル調査・実証事業(米国向け食の戦略的輸出支援モデル実証・調査事業)報告書
報告書概要
この報告は、令和4年度に実施された米国向け食の戦略的輸出支援モデル実証・調査事業について書かれた報告書である。我が国の農林・水産物輸出額は2021年に初めて1兆円を突破したが、政府目標である2030年5兆円達成に向けて、人口増加を続ける米国市場の更なる開拓が重要となっている。米国向け輸出は第3位の実績を有するものの、食品安全強化法制定等により参入ハードルが高くなっており、中堅・中小企業が競争の厳しい米国市場で勝ち抜くには差別化集中戦略による展開が必要である。
本事業では、新たな販路拡大チャネルとして現地進出日系企業の社員食堂を活用したモデルの事業化可能性を検証した。具体的には、テキサス州の日系企業社食において2023年5月に中部地域の食材を使った社食フェアを開催し、メニュー開発から提供まで一連の実証を行った。フェアでは給食事業者のエグゼクティブシェフが支援対象商材を活用したメニューを開発し、関係者による試食イベントを経て最終メニューが決定された。
実証を通じて、社食モデルの課題として、調理時間や手間の制約、コスト管理の厳しさ、現地在庫確保の必要性等が明らかになった。また、米国では輸入食品に対する規制が厳しく、FDA食品安全強化法やカリフォルニア州独自の規制等、定期的な確認が必要である。テキサス州は白人系マーケットで日本食の普及が西海岸に比べて遅れており、「中部の食」ではなく「日本の食」としてのブランディング展開が重要である。
今後の展開方向性として、主菜材料としての活用は価格競争力の観点から困難であるため、調味料や香辛料などシーズニングやトッピング素材としての提案が有効であると結論づけている。少量使用で日本食らしい風味を付加でき、アレンジ範囲も広いことからコストパフォーマンスに優れるとしている。多様な人種で構成される米国市場の特性を踏まえた事業展開が求められる。
