令和4年度産業経済研究委託事業(ダイバーシティ経営推進に向けたアンコンシャス・バイアス研修のあり方と効果測定指標等に関する調査)事業実施報告書

掲載日: 2024年1月25日
委託元: 経済産業省
担当課室: 経済産業政策局経済社会政策室
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令和4年度産業経済研究委託事業(ダイバーシティ経営推進に向けたアンコンシャス・バイアス研修のあり方と効果測定指標等に関する調査)事業実施報告書のサムネイル

報告書概要

この報告は、ダイバーシティ経営推進に向けたアンコンシャス・バイアス研修のあり方と効果測定指標等に関する調査について書かれた報告書である。本調査は、令和4年度に東京大学が実施した産業経済研究委託事業として行われ、日本企業におけるダイバーシティ実現を妨げる無意識の偏見への取り組みを検証したものである。

アンコンシャス・バイアスとは、無意識の偏見や思い込みのことであり、人間の情報処理の特徴により生じる認知の歪みである。人は毎秒1100万bitもの情報を五感で受け取るが、処理できるのは16から50bit程度であるため、無意識の分類能力により情報を選択している。この分類過程で生じる歪みがアンコンシャス・バイアスとなる。代表的なものには、確証バイアス、正常性バイアス、ダニング・クルーガー効果、インポスター症候群、ステレオタイプなど200種類以上が存在する。

組織マネジメントへの影響として、人材採用、ジョブアサイン、評価、昇格といった重要な意思決定場面でハロー効果やステレオタイプ脅威が作用し、ダイバーシティに欠けた画一的な組織を生む原因となっている。特にジェンダー・バイアスは、男女の自信格差や競争心の違いを生み出し、女性の昇進機会を阻害する要因となっている。

本調査では、NTTデータ、リクルート、メルカリなど5社の企業ヒアリングを実施し、各社の取り組み動向を分析した。全ての企業で戦略的な取り組みが実施されており、自社に適した研修機会の提供、行動変容を促すしくみと環境への工夫が共通の特徴として挙げられた。

VRを活用したアンコンシャス・バイアス研修については、ワーキングペアレントをテーマとした研修プログラムを開発し、4社で実証実験を行った。VRパースペクティブテイキングにより、異なる立場の疑似体験を通じて共感を促し、視野・視点の拡張と行動変化を期待するものである。効果測定フレームワークとして、研修前後のアンケート調査と事後ヒアリングを組み合わせた評価手法を構築し、既存指標と新規指標による包括的な効果測定の枠組みを提示した。