令和4年度地域経済産業活性化対策調査事業(産業・経済活動における気候変動適応の取組モデル創出に向けた調査事業)報告書
報告書概要
この報告は、北海道のホタテ産業における気候変動適応の取組モデル創出について書かれた報告書である。北海道周辺地域では豊かな自然環境を資源とする食品製造業やレジャー関連業等が高い競争力を有しているが、気候変動による自然資本の変化がこれらの産業に深刻な悪影響を及ぼしている事例が存在する。政府は気候変動適応法を制定し適応計画を策定したが、産業・経済活動分野については研究事例が少なく科学的知見の集積が必要とされている。本事業では経済的インパクトが大きく産業の裾野も広いホタテ産業を検討対象として、気候変動影響による課題整理・リスク検討と科学的知見に基づく影響予測を行った。産業界における課題・リスクとして、海水温上昇によるホタテガイの生息環境への影響、流氷減少による餌料生物の減少、台風や低気圧の大型化による物理的被害や休漁日数増加、集中豪雨による土砂流入リスク、気温上昇による品質低下や物流網停滞等が確認された。科学的知見に基づく影響予測では、有識者へのヒアリング調査と文献調査を実施し、風による底面流速とホタテガイ被害の関係について検討を行った。過去の事例分析により、強風による海底流れがホタテガイの大量斃死を引き起こすメカニズムが明らかにされた。インパクトチェーンの整理では、気候変動影響とホタテ産業への影響連鎖を図示化し、外力・暴露・脆弱性の三要素を関連付けて分析した。今後の適応策検討に向けては、サプライチェーンとインパクトチェーンの内容充実化、風によるホタテ産業への影響シミュレーション、風以外の気象現象の検討が提案されている。
