令和4年度産業技術調査事業(大学発ベンチャーの実態等に関する調査及び大学発ベンチャー等への経営人材のマッチング方策に関する調査)
報告書概要
この報告は、大学発ベンチャーの実態と経営人材マッチング方策について書かれた報告書である。
本調査は令和4年度に実施され、大学に潜在する研究成果を活用して新市場創出を目指す大学発ベンチャーの現状把握と課題分析を目的としている。大学発ベンチャーは2014年度以降7年連続で増加しており、イノベーションの担い手として期待されている状況である。
調査は三段階で実施された。まず全国の国公私立大学、高等専門学校、TLO、インキュベーション施設、都道府県庁を対象とした設立状況調査により大学発ベンチャーの存在と企業概要を把握した。次に把握された企業に対して実態調査を行い、企業概要や資金・人材等の状況を調査した。さらに大学発ベンチャー数の多い11大学と博士号取得者活用に特徴的な14社に対してヒアリング調査を実施した。
大学発ベンチャーは研究成果ベンチャー、共同研究ベンチャー、技術移転ベンチャー、学生ベンチャー、関連ベンチャーの5つに分類され、特定非営利活動法人や海外設立企業も含まれる定義となっている。
調査結果から、大学発ベンチャーの経営人材確保において最も重要な要素はエコシステムの構築であることが明らかになった。海外の先進的支援機関では、エコシステム自体が巨大な人材プールとなっており、多様な人材が集約され、送り出し後も継続的な関係性が維持されている。またエコシステム内では創業者間の継続的コミュニケーションや市場機会判断へのアドバイス、経営者、VC、弁護士、会計士等の専門人材ネットワークが活用されている。
一方、国内支援機関では人材データベース化やマッチング率向上等の取り組みにとどまっており、ビジネス人材に集中した人的ネットワーク形成が課題となっている。
エコシステム構築には目的の明確化、ネットワーク構築、プラットフォーム提供、組織・人材育成、環境整備、政策支援の要素に総合的に取り組む必要があると結論づけられている。
