令和4年度産業経済研究委託事業(次期国土形成計画等を踏まえた工業用水道のあり方にかかる調査)報告書
報告書概要
この報告は、令和4年度産業経済研究委託事業として実施された、次期国土形成計画等を踏まえた工業用水道のあり方にかかる調査について書かれた報告書である。
調査の背景として、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた地域産業構造の変革、デジタル技術を活用した新たな地域生活圏の構築、および工業用水道施設の老朽化対策が挙げられている。本調査では、工業用水道事業における再生可能エネルギー設備導入の促進と、水道情報活用システムの導入による施設管理の高度化について検討している。
再生可能エネルギー設備の導入事例調査では、太陽光発電11件と小水力発電6件の計17設備について、国内の水道および農業用水分野における導入状況を調査した。太陽光発電では仙台市水道局の国見浄水場や愛知県企業庁の犬山浄水場などが、小水力発電では仙台市水道局の上追沢沈砂池や豊中市上下水道局の野畑配水場などが対象となった。これらの事例では、官民連携による「屋根貸し」や「場所貸し」といった手法が採用され、PPAモデルの活用により事業者負担を軽減しながら再生可能エネルギーの導入を実現している。
脱炭素先行地域における工業用水の利用状況についても調査し、バイオマス発電などの脱炭素化事業での活用方策を整理した。また、水道情報活用システムの導入状況調査では、10事業者を対象として、システムの導入目的、効果、課題等について分析を行った。金沢市企業局や笠松町水道部などの事例では、施設台帳管理や料金システムの効率化、ベンダーロックインの解除などが導入目的として挙げられている。
海外事例調査では、デジタル化を踏まえた地域生活圏におけるサービスと産業配置の動向を分析し、新産業の立地可能性地域として洋上風力発電やデータセンターなどを取り上げた。さらに、南海トラフ地震や首都直下型地震における重要産業の被災インパクトについても整理している。
調査結果を踏まえた今後の工業用水道事業のあり方として、地域産業構造の変革に柔軟に対応できる体制構築、再生可能エネルギー設備導入による脱炭素化の推進、デジタル技術を活用した施設管理の高度化、災害リスクを考慮した分散立地への対応などが提言されている。