令和4年度産業技術調査事業(産業界における博士人材の処遇向上に関する調査)調査報告書
報告書概要
この報告は、産業界における博士人材の処遇向上について書かれた報告書である。経済産業省が実施した令和4年度産業技術調査事業として、三菱総合研究所が博士人材の活用状況を国内外で調査したものである。調査の背景として、新しい資本主義の下で「人への投資」が最重要施策に位置付けられ、博士人材の活用が重点課題とされているが、日本企業における博士人材の活躍は現状必ずしも多くない状況がある。その主要因として、博士人材の処遇の問題が企業側の雇用管理上の課題として挙げられている。本調査は、博士人材の処遇を単に賃金のみから捉えるのではなく、背後にある雇用システムや企業形態を加味し、日本の現在の雇用システムの中で実現可能な処遇向上の形を検討することを目的としている。海外企業調査では、Amazon.com社の事例として、文理両方の博士人材を好待遇で採用し、データサイエンス、ハードウェア開発、機械学習、経済学など多様な分野で専門職を募集している実態が明らかになった。同社では博士研究員職やVisiting Academicsプログラムなど多様な雇用形態により研究者との連携を最大限活用している。また台湾積体電路製造(TSMC)では、グローバルな新卒・経験者採用を実施し、技術職を管理業務から解放するデュアル・キャリアラダー制度を導入している。産学連携による寄付講座の設置、海外名門大学からの優秀な人材採用、OJTの強化など多様な人材育成の取組により、博士人材を含めた技術人材が活躍できる環境を実現している。
