令和4年度工業用水道事業におけるデジタル技術等・広域化等・民間活用の一体的導入の可能性調査業務
報告書概要
この報告は、工業用水道事業におけるデジタル技術・広域化・民間活用の一体的導入可能性について書かれた調査報告書である。
我が国の工業用水道事業は人手不足、自然災害の激甚化、建設から40~50年経過した施設の老朽化という深刻な課題に直面している。さらに受水企業による工業用水の再利用促進や企業撤退により需要量が減少し、料金収入も年々減少しており、将来的な費用増大と収入減少による経営悪化が予想される状況である。
現状では工業用水道事業におけるデジタル技術導入は約3割に留まり、広域化を実施している事業者は約4割、民間活用については約8割の事業者が検討していない。デジタル技術導入には情報提供と費用低減が、広域化には物理的制約を超えた業務連携が、民間活用には事業規模確保が必要である。
本調査では三重県、北九州市、大阪市の工業用水道事業を検討対象とし、各事業の課題を経営資源と外部環境の観点から分析した。国内外のデジタル技術導入事例調査及び民間事業者ヒアリングを通じて、スマートメーター、IoTセンサー、AI技術等の有効なデジタル技術を整理した。
これらの調査結果を踏まえ、多くの工業用水道事業への普及・横展開が可能な事業モデルを創出した。一体的導入により、デジタル技術による遠隔地事業間の業務連携、広域化による民間活用に適した事業規模の実現、共通デジタル技術導入による費用低減、自由度の高い民間活用によるデジタル技術活発導入という相乗効果が期待される。
検討対象事業への事業モデル適用検討では、各事業における具体的な改善効果を算出し、水道情報活用システムとの互換性評価も実施した。創出された事業モデルの有効性が確認され、来年度以降の事業化に向けたロードマップが作成された。本調査により工業用水道事業の最適化を促進する事業環境整備が図られ、経営状況改善と工業用水安定供給継続の実現が期待される。
