令和4年度地球温暖化対策における国際機関等連携事業委託費(産業炭素中立化と国際貿易ルールに係る国際会議開催)
報告書概要
この報告は、EUの炭素国境調整措置(CBAM)と産業脱炭素化の国際貿易ルールについて書かれた報告書である。2022年度の委託業務として、日本エネルギー経済研究所が経済産業省から受託し、国境調整措置に係る調査・分析と国際会議開催の2部構成で実施された。EUは2019年から炭素国境調整の検討を開始し、2022年12月にトリローグ合意により大枠の政治合意を完了した。この制度は2023年10月から輸入製品の製品排出量計測義務を開始し、2026年から実質的な課金を開始する世界初の制度である。対象製品はセメント、電力、肥料、鉄鋼、アルミ、水素であり、将来的にはEU排出量取引制度の全セクターへの拡大を目指している。一方、米国ではインフレ抑制法案が成立し、原産国指定を伴う税控除による大規模な気候変動対策が実施されている。これに対しEUも警戒感を強め、戦略的技術の域内原産地目標を40%に設定したNet Zero Industrial Actの草案を公表した。日本からEUへの対象製品の直接輸出量は微少であるが、複雑系製品や間接排出量への拡大可能性があり、エネルギー供給事業者にはカーボンフットプリント開示が要請される。WTO協定との整合性については、内国民待遇、最恵国待遇、輸出補助金などの基本的規律との関係で個別具体的な制度設計に依存するとされている。10月7日にはGGX会議がハイブリッド形式で開催され、900名余が参加登録し、海外専門家を含む登壇者により今後の日本のGX推進に向けた議論が行われた。
