令和4年度産業標準化推進事業委託費(戦略的国際標準化加速事業:ルール形成戦略に係る調査研究(我が国工作機械産業の競争力強化に関するルール形成戦略に係る調査))調査報告書
報告書概要
この報告は、我が国工作機械産業の競争力強化に向けたルール形成戦略について書かれた報告書である。経済産業省の委託により、JFEテクノリサーチが令和4年度に実施した調査の結果をまとめたものであり、デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展に対応した工作機械産業の課題と戦略を提示している。
調査の背景として、我が国の工作機械は世界トップシェアを争う高い国際競争力を有する一方で、人口減少による熟練工の不足、自動車業界のEVシフトなどユーザー業界の構造変化により、自動化・無人化・効率化への対応が急務となっている状況がある。このため、デジタル化に必要な計測データの標準化や評価方法の整理、グローバルなルール形成への対応戦略の検討が重要となっている。
調査方法として、工作機械メーカーおよびユーザー企業への国内外ヒアリング、寸法公差・幾何公差等の既存規格の整理、有識者検討会による議論を実施した。国内では自動車・電機部品業界、工作機械メーカーなど9社にヒアリングを行い、海外では大学関係者にオンラインヒアリングを実施した。また、ISO、JIS、ASMEなどの国際標準の相違点と課題についても詳細に分析した。
調査結果から明らかになった主要課題として、設計工程と製造工程間のデータ連携不足、CADデータから加工プログラムへの変換における人手作業の必要性、マシンリーダブルな状態実現のための情報不足などが挙げられた。特に、3D注記CAD(3DA)の活用による一気通貫のデータ流通の実現が重要な課題として浮上した。試作工程のミニマム化とスピーディーな商品開発の実現には、設計・製造・調達のサイマル活動とフロントローディングが不可欠であることが確認された。
DX化の取組みについては、協調可能な領域での共通化と競争領域での差別化を明確に分けた戦略が必要であることが判明した。工程設計の自動化、デジタルツインを活用した生産プロセスの効率化、関連機器を含めた総合的なシステム最適化などが重要な取組み方向として特定された。教育・普及の観点では、自動車業界のMBD推進センター「SURIAWASE2.0」の取組みや電機業界の標準化活動が参考となることが明らかになった。
海外動向として、米国のMIL STD 31000BやNIST MBD/MBE活動、ASME MBE委員会の取組みが工作機械産業に与える影響について分析した。これらの動向を踏まえ、我が国工作機械産業が国際競争力を維持・強化するためのルール形成戦略として、標準化推進、DX化における協調領域での取組み強化、教育・普及活動の充実が重要であることが結論づけられた。
