令和4年度休廃止鉱山における坑廃水処理の高度化技術調査事業調査報告書
報告書概要
この報告は、休廃止鉱山における坑廃水処理の高度化技術について書かれた報告書である。独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構が令和4年度に実施した調査事業の成果をまとめたものである。
報告書では、坑廃水処理の新技術として注目されるパッシブトリートメント(PT)技術の導入に向けた調査研究が中心となっている。PTは従来の化学処理方式と比較して運転管理が簡便で長期的な維持管理コストの削減が期待される技術である。特にマンガン酸化菌を活用した接触酸化方式について、モデル鉱山におけるパイロットスケールプラントでの現地試験を実施し、処理性能の評価と現場適用に向けた検討を行った。また、人工湿地方式についてもメカニズム解明と処理条件の最適化を検討し、ヨシやオオカナダモなどの植物を活用した坑廃水処理の可能性を評価した。
重金属処理技術として、中性でヒ素を含有する坑廃水に対するPT適用性調査や、高濃度の亜鉛・カドミウム含有坑廃水の処理技術開発も実施された。これらの技術では重金属吸着顆粒状鉄粉や石灰石を用いた中和処理システムの検討が行われ、実証試験設備の設置工事も実施された。さらに、水質予測モデルを用いたPT技術の水平展開検討により、異なる鉱山条件への適用可能性が評価された。
遠隔監視システムの導入に向けた調査研究では、IoT技術を活用したリアルタイム水質モニタリングシステムの開発と実証試験が実施された。このシステムにより、pH、電気伝導度、水温などの水質パラメータを遠隔で常時監視することが可能となり、坑廃水処理施設の効率的な運転管理が期待される。また、鉱害防止対策技術の最適化と管理の高度化に関する検討では、処理水量削減や利水点管理などの総合的なアプローチが提案された。
