令和4年度 「質の高いエネルギーインフラの海外展開に向けた事業実施可能性調査事業」ガーナ共和国・小型モジュール炉(SMR: Small Modular Reactor)を用いた電力インフラ整備の事業可能性調査事業 調査報告書
報告書概要
この報告は、ガーナ共和国における小型モジュール炉(SMR)を用いた電力インフラ整備の事業可能性について調査した報告書である。ガーナは現在、電力供給の不安定性と需要増加に直面しており、2030年までに電力需要が大幅に拡大することが予測されている。同国は1960年代から原子力開発に取り組んでおり、研究炉の運転経験を有するものの、商用原子力発電所の導入には至っていない。本調査では、NuScale社が開発したVOYGR™システムのガーナへの適用可能性を検討している。
調査の結果、ガーナの電力市場において77MWe×12基構成のVOYGR™-12が最も適していることが判明した。法規制面では、既存の原子力法に基づく許認可プロセスが整備されており、米国のNRC基準との整合性も確認された。環境影響評価についても、ガーナの環境社会影響評価制度と米国の手法との比較検討を行い、実施可能性を評価した。電力システム分析では、現在の火力発電中心の電源構成から、SMRによる安定的なベースロード電源の必要性が明らかになった。
建設市場調査では、ガーナ国内の建設会社、労働市場、重機・建材市場を詳細に分析し、現地調達率の向上可能性を検討した。労働力については、適切な訓練により現地化が可能であり、建設資材の一部も国内調達が期待できることが確認された。原子力機器の現地製造については、配管、バルブ、ポンプ類を中心に現地企業の能力を評価し、段階的な国産化計画を策定した。
総合評価として、SMR導入はガーナの安定的電力供給、インフラ発展、人材育成、産業振興に大きく貢献すると結論づけている。同時に、日本の原子力産業にとっても海外展開の重要な機会となることが示されている。
