令和4年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(我が国における政策へのデザインアプローチ導入の在り方等に係る調査及び実証事業)報告書
報告書概要
この報告は、現代社会の複雑性、多様性、不確実性という変化に対応する政策立案手法について書かれた報告書である。近代社会では、超高齢化や環境問題などの厄介な課題が増加し、これらは多面的な性格を持つため、特定のステークホルダーにとっての解決策が別のステークホルダーには新たな課題となる複雑性を示している。同時に、女性の社会進出やジェンダー、多文化共生といった従来の政策では対応できない新しいニーズが顕在化し、企業や市民団体も社会的責任を重視するなど、国民の価値観や需要の多様化が進んでいる。さらに、急速なテクノロジーの発展やグローバル化、スマートフォンの浸透などにより社会変化の速度が加速し、既存の産業や雇用構造の大きな変化によって過去の政策では対応が困難となり、政策の対象や意図の迅速な見直しが求められる不確実性が高まっている。こうした外部環境の変化に対応するため、海外の政策立案におけるトレンド調査を通じて、政策づくりにおいて重要な三つの要素が明らかになった。第一に、複雑性に対しては「真の課題を問い直す」ことであり、中長期的なビジョンを設定しながら多様な視点を掛け合わせて相互依存する仕組みを理解し、政策により解決すべき本質的な課題の再定義から始めることが重要である。第二に、多様性に対しては「多様な人に共感し届ける」ことであり、政策対象者が本当に困っていることや求めていることを深く理解し、真に届けたい人から共感される伝達を重視することが必要である。第三に、不確実性に対しては「実験し改善し続ける」ことであり、時代の変化を捉えて実験による検証を繰り返し、そこから得た学びを通してより確度の高い政策を提供することが求められている。
