令和4年度二酸化炭素貯留適地調査事業委託業務報告書
報告書概要
この報告は、令和4年度二酸化炭素貯留適地調査事業について書かれた報告書である。日本CCS調査株式会社が実施した本事業は、カーボンニュートラル実現に向けた二酸化炭素の地中貯留技術の確立を目的として、海域における貯留適地の調査研究を包括的に実施したものである。
主要な調査活動として、本荘沖において3D弾性波探査を実施し、海底下の地質構造を詳細に解析した。また能代沖や隠岐沖では海底地形判読および海底地質情報のコンパイルを行い、各海域の地質特性を把握した。さらに佐渡南方沖においては貯留層シミュレーションによる貯留可能性検討を実施し、CO2の圧入能力や貯留挙動を定量的に評価した。
技術的検討では、高傾斜井を用いた圧入手法の有効性や地層破壊メカニズムの基本的事項について整理し、貯留技術の信頼性向上に資する知見を得た。堆積システムの検討により、前弧側と背弧側の地質特性の違いを明確化し、各地域に適した貯留層・遮蔽層の評価手法を確立した。
経済性調査では、大規模排出源の分布状況や輸送技術、モニタリング技術について海外事例を含めて調査し、CCS事業の実用化に向けた課題を整理した。社会的受容性の醸成活動として、各地域の環境フェアへの出展や講演活動を通じて、地域住民への情報発信と理解促進に努めた。
有識者委員会を3回開催し、事業の進捗状況や技術的妥当性について専門家による評価を受けた。これらの成果を踏まえ、調査地点の総合評価を実施し、2023年度以降の調査計画案を策定した。本事業により、わが国のCCS技術開発の基盤となる地質情報の蓄積と技術課題の整理が大幅に進展した。
