令和4年度重要技術管理体制強化事業(国際約束の履行等に基づく貿易管理制度等調査)報告書
報告書概要
この報告は、日本の貿易管理制度の参考とするため、諸外国における制裁措置の実態について調査・分析を行った報告書である。報告書は主に北朝鮮制裁に関する実態調査とロシア制裁に関する調査の二つのタスクで構成されている。
北朝鮮制裁に関する実態調査では、国内の海運会社や商社等に対してヒアリング調査を実施し、輸出入に伴い利用する船舶が瀬取りなどの北朝鮮への違法な輸出入に関与した疑いがあるかの確認の有無、および確認を実施している場合の具体的な方法について調査が行われた。近年では制裁回避の手口が世界的に複雑化・巧妙化していることが懸念されており、制裁回避が疑われる事例の分析及び共有を企業におけるデュー・ディリジェンスに活かす取組の重要性が増している。
ロシア制裁に関する調査では、韓国、台湾、シンガポールを主要な調査対象として、現地の専門家と連携し各政府が行っている経済制裁措置に関する詳細な調査を実施した。具体的には、各国政府がどのような制度により制裁を措置しているかの調査を行い、概要をまとめるとともに、経済制裁全般がロシア経済に与えた影響について文献調査・データ分析の両面から分析を行った。
台湾の事例では、戦略ハイテク物資の輸出規制制度について詳細に検討されている。台湾では貿易法に基づく輸出制限公告により、軍事転用可能な物資、一般軍用物資、北朝鮮・イラン・ロシア・ベラルーシ向け輸出センシティブ物資リストなどが戦略ハイテク物資として規定されている。ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、台湾は段階的に制裁措置を強化し、まずワッセナー・アレンジメントにて規制される製品に係るロシア向け輸出審査を厳格化し、その後ロシア向け輸出ハイテク物資リストを制定した。さらにベラルーシを制裁対象に追加し、制限品目も拡大して最終的には109品目の戦略ハイテク物資の輸出を制限するに至った。違反者に対しては刑事罰や行政処分が科される厳格な制裁制度が確立されている。
