令和4年度産業経済研究委託事業(諸外国における外国公務員贈賄防止及び営業秘密保護等に係る外国制度調査)
報告書概要
この報告は、諸外国における外国公務員贈賄防止及び営業秘密保護等に係る外国制度について書かれた報告書である。本調査は不正競争防止法の見直しを検討する上で参考となる海外制度について、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、オーストラリア、韓国等の制度や運用を調査・整理したものである。
外国公務員贈賄防止に関しては、OECD贈賄作業部会による第4期対日審査において、日本の罰金額が他国と比較して低廉であること、公訴時効期間の問題、外国従業員に対する法人管轄権の不備等が指摘され、制度的手当が求められている状況を踏まえている。調査対象国の刑事罰、行政罰、民事制裁の規定、罰金スライド制の基準、公訴時効期間、管轄権の範囲について詳細に調査し、実際の摘発事例や制裁の傾向についても分析を行った。
営業秘密保護については、立証負担の軽減、損害賠償額算定規定、ライセンシーの保護、渉外的な営業秘密侵害に係る国際裁判管轄・準拠法の4つの課題に対応するため、証拠収集制度、立証負担軽減制度、損害賠償額算定・推定制度、ライセンシー保護制度について各国の制度を比較検討している。特に民事手続と刑事手続における証拠収集方法の相互関係や、知的財産法における原告の立証負担軽減制度の内容が詳細に分析されている。
新たな知的財産制度の課題として、メタバース等の仮想空間の活用が進む中で、フィジカル・デジタルを交錯する知的財産の利用における役割分担の整理が必要となっている。特に非登録デザインの保護について、商品の形態に無体物が含まれるか、フィジカル・デジタルを交錯する模倣事例への対応、競合しない市場における営業上の利益の侵害等の論点について、各国の法制度や議論状況を調査している。調査方法としては公開情報調査に加え、海外法律事務所との協力により詳細な質問票を用いた制度調査を実施し、各国の法制度の現状把握と課題の整理を行っている。
