令和4年度鉱物資源開発推進のための探査等事業(鉱物資源基盤整備調査事業(海外の重要鉱物戦略の分析・評価等に関する調査))報告書

掲載日: 2024年3月13日
委託元: 経済産業省
担当課室: 資源エネルギー庁資源・燃料部鉱物資源課
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令和4年度鉱物資源開発推進のための探査等事業(鉱物資源基盤整備調査事業(海外の重要鉱物戦略の分析・評価等に関する調査))報告書のサムネイル

報告書概要

この報告は、主要先進国における重要鉱物戦略の分析・評価について書かれた報告書である。

カーボンニュートラル社会の実現に向けて、再生可能エネルギーや電気自動車等の低炭素化技術が普及する中、これらの製品に不可欠な重要鉱物の需要が急速に増加している。ロシアによるウクライナ侵攻を契機として、エネルギーや鉱物資源の安定供給に対する不安が高まり、経済安全保障の観点から重要鉱物のサプライチェーン強靱性の確保が喫緊の課題となっている。

米国では2021年6月にバイデン政権が重要製品のサプライチェーン強化報告書を発表し、リチウム、ニッケル、コバルト、グラファイト、マンガン等の重要鉱物について国内生産拡大を指示している。米国の重要鉱物政策は、海外依存脱却と国内サプライチェーン構築を目標とし、国防生産法による財政支援、持続可能な開発、リサイクル推進を柱としている。カナダは31鉱種を対象とした重要鉱物戦略を策定し、38億カナダドルの予算でバリューチェーン構築と持続可能な開発を推進している。

欧州委員会は30鉱種の重要原材料リストを設定し、域内調達強化、第三国からの供給源多様化、資源の循環利用促進を重点政策としている。豪州は26鉱種を対象として、国内鉱業と処理への投資支援、研究開発促進、国際パートナーシップ強化を展開している。中国は24種類の戦略的鉱物資源を指定し、一帯一路沿線諸国との投資協力と希土類開発管理を重視している。

各国の重要鉱物リストには共通する鉱種が多く、特にリチウム、コバルト、ニッケル、希土類、グラファイトが重視されている。政策の方向性として、輸入依存国は国内生産能力開発と代替材料開発に注力し、資源保有国は生産優位性維持と川下産業育成を目標としている。使用済みバッテリーのリサイクルについては、日本では年間約23万台のEVが使用済みとなると予測され、適切な回収・処理システムの構築が重要である。

国際標準化では、希土類とリチウムの技術委員会が設立され、中国が議長国として規格制定を主導している。持続可能で責任ある採掘に関する国際協調が進展し、気候変動対応、労働者権利、ガバナンス等の観点から多様なイニシアチブが展開されている。