令和4年度コンテンツ海外展開促進事業(電子書籍市場の拡大等に関する調査)報告書
報告書概要
この報告は、経済産業省委託事業として実施された電子書籍市場の拡大等に関する調査について書かれた報告書である。読書バリアフリー法の成立を受け、視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等の普及・提供を促進するため、様々な課題解決に向けた調査と検討を行った内容をまとめている。
調査は主に三つの分野で実施された。第一に、リフロー形式電子書籍の制作ワークフローについて、出版社、印刷会社、電子書籍制作会社へのヒアリング調査を通じて実態把握を行った。大手出版社は自社で制作する一方、中小出版社は外部委託する傾向があることが明らかとなった。制作コストや作業時間は書籍の内容や複雑さによって大きく異なり、文字主体の書籍はリフロー形式、図版が多いものはフィックス形式で制作される傾向があることが確認された。
第二に、テキスト読み上げ機能(TTS)の利用・普及に関する課題調査を実施した。出版社や有識者へのヒアリングにより、読み上げ精度向上のための技術的課題と制度面の課題を抽出した。各手段によって読み上げ方が異なることから、統一した対応が困難であることが判明し、推奨環境などの情報整理が必要であることが示された。
第三に、オーディオブックの制作方法等について情報収集と整理を行った。また、読書バリアフリー環境整備のための電子書籍市場等の拡大に関する検討会を全4回開催し、課題解決に向けた方策を検討した。検討会には出版関係者、障害者団体、関係省庁等が参加し、ロードマップ・アクションプランの進捗状況確認と今後の対応について議論が行われた。
調査結果として、読書バリアフリー法第11条・第12条に基づく電子データ提供の方向性が示された。特定電子書籍等製作者への提供では、窓口を集約したやり取りが想定され、書籍購入者への提供では特定製作者が窓口を担うことが提案された。参考指標として電子書籍数やオーディオブック登録数の定点観測開始も決定された。
今後の課題として、TTSの推奨環境検討、EPUBリフローのバリアフリーガイドライン検討、データ提供条件の詳細検討、フィックス型についての現状把握等が挙げられている。過年度調査から継続して取り組んできた読書バリアフリー環境整備について、出版業界と関係団体の連携により着実に進展していることが確認された。
