令和4年度クライメート・イノベーション・ファイナンス推進事業委託費(トランジション・ファイナンスのあり方に関する調査)報告書
報告書概要
この報告は、トランジション・ファイナンスとイノベーション・ファイナンスのあり方について書かれた報告書である。パリ協定の目標達成に向けて多排出産業におけるトランジション計画の重要性が高まる中、科学的根拠に基づく様々なクライテリアが世界的に策定されている。EUタクソノミーやCBIはグリーンかどうかの評価が中心であったが、直近ではトランジションや多排出産業向けへの拡張等の動きが存在する。EUタクソノミーは持続可能な活動やプロジェクトに資金を供給するため、何がサステナブルな活動かの明確な定義と共通言語を作成している。TPIは独自のモデルやIEAのベンチマークを用い、産業別・気温目標別のベンチマークとなる排出経路を公開している。MPPは産業界と連携し、鉄鋼業のネットゼロ戦略を策定し、ネットゼロに向けた技術情報等に加え、革新的な技術導入が2030年以降となる「Tech Moratorium」、炭素価格の導入を仮定する「Carbon Cost」という2つのシナリオについて、モデルを用い鉄鋼生産の削減経路を示している。また、イノベーション・ファイナンスについては、各国の政府系金融機関による脱炭素技術への資金供給体制が比較検討されており、米国のDOEローンプログラムオフィス、欧州のInvestEUファンド、フランスのBpifranceなどの取組が紹介されている。これらの分析を通じて、気候変動対策に向けた金融手法の現状と課題が整理されている。
