令和4年度国内における温室効果ガス排出削減・吸収量認証制度の実施委託費(世界全体でのカーボンニュートラル実現のための経済的手法等のあり方に関する調査)調査報告書
報告書概要
この報告は、世界全体でのカーボンニュートラル実現のための経済的手法等のあり方について書かれた報告書である。
本報告書は令和4年度に日本エネルギー経済研究所が実施した調査であり、カーボンプライシングの調査・分析と環境価値の調査・分析の2部構成となっている。カーボンプライシングとは炭素排出に価格をつけることで排出削減と低炭素技術への投資を促進する政策手法であり、炭素税や排出量取引制度などの明示的カーボンプライシングと、エネルギー税や補助金などの暗示的カーボンプライシングに分類される。
世界各国のカーボンプライシング制度について、EU、英国、ドイツ、フランス、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、スイス、米国、カナダ、ニュージーランド、豪州、韓国、中国、シンガポール、インドネシア、フィリピン、タイ、ベトナム、マレーシアの20か国・地域を対象として詳細な調査が実施された。各国の炭素税制度は、それぞれの経済、社会、エネルギー需給構造に基づいて設計されており、課税対象、課税段階、税率、減免措置などが多様である。
炭素税については、1990年代から欧州諸国を中心に導入が始まっているが、温室効果ガス排出削減だけでなく財源調達、所得再配分、経済安定化といった複数の政策目的を有している。各国とも環境面での政策目標と政治経済的な影響を考慮して様々な優遇・特例・免税措置を設けており、理論的な効率性の実現が困難な状況となっている。排出量取引制度についても各国で制度設計が異なり、対象部門、割当方法、価格安定化措置などに違いがある。
環境価値に関しては、国際イニシアティブの動向、ボランタリークレジットの海外動向、証書等の動向について調査が行われた。特に、カーボンニュートラル目標の達成に向けて、企業や政府が活用するボランタリークレジット市場の透明性と信頼性の向上が重要な課題となっている。証書制度については、再生可能エネルギーの環境価値を証明するグリーン証書や水素の属性証明などの仕組みが各国で整備されつつある。
