令和4年度燃料安定供給対策に関する調査事業(新LNG戦略の策定と実行のための調査等)
報告書概要
この報告は、日本の新LNG戦略の策定と実行に向けた調査事業について書かれた報告書である。2022年度におけるLNG市場は、ロシアによるウクライナ侵攻の影響により、欧州へのLNG流入が大幅に増加し、世界のLNG物流が欧州シフトする構造変化が生じた。米国産LNGの欧州向け出荷量は前年の3割から6割強まで拡大し、一方で日本と中国のLNG輸入量は減少した。この結果、天然ガス・LNG価格は史上最高水準まで上昇し、高価格が常態化する状況となった。欧州のロシア産ガス依存脱却により、代替供給源からの調達競争が激化し、日本のLNG輸入価格も円建てで史上最高を更新した。こうした市場変動を受けて、LNG長期契約調達と投資活動が活発化し、北米を中心とした新規プロジェクトが相次いで投資決定を行った。中国企業や欧州需要家による大型長期契約締結も進み、2020年代後半の需要対応に向けた国際的な調達競争が本格化した。日本は世界最大のLNG消費国として、エネルギー安全保障確保の観点から、供給源の多角化とアジアLNG市場の流動性向上に取り組む必要がある。また、脱炭素化への対応として、メタン排出削減やブルー水素・アンモニア製造への転換検討も重要な課題となっている。国際協力においては、G7やG20等の枠組みを通じた政策協調、米国や欧州との戦略的対話、LNG産消会議等による関係強化が求められる。これらの取り組みを通じて、日本の国益維持と国際LNG市場の安定化を両立させる新たなLNG戦略の実行が急務である。
