令和４年度中小企業実態調査事業（地域文化創造調査実証事業）事業実施報告書「アートやクリエイティブを活用して地域を元気にしよう×ARTスタートアップガイドライン」

この報告は、アートやクリエイティブを活用して地域を元気にするプロジェクトの実施手法について書かれた報告書である。経産省が実施した令和4年度中小企業実態調査事業の一環として、地域文化創造調査実証事業を通じてまとめられたものである。報告書では、地域におけるアートプロジェクトの発端を「アーティスト」「企業や自治体」「地域住民」の3つのエンジンに大別し、それぞれがどのような関係性を築きながらプロジェクトを実現していくかを明らかにしている。

先進事例として、大分県別府市のBEPPU PROJECT、神奈川県横浜市の黄金町エリアマネジメントセンター、山梨県富士吉田市のFUJI TEXTILE WEEKの3つを取り上げ、関係者へのインタビューを実施している。これらの事例分析により、アートプロジェクトの企画から実施までの具体的なフローチャートを5つのステップに整理し、各段階における留意点をまとめている。公共空間の利用拡大についても、道路・水辺・公園の3つの公共空間における占用手続きや、屋外広告物規制、建築基準法等の各種規制への対応方法を詳細に解説している。

継続的な活動のための組織運営については、アート系NPOによる地域との関係継続、エリアマネジメント団体による作品・空間の継承、地域プラットフォームとの連携による小規模活動の発展という3つの仕組みを提示している。資金調達面では、自己資金、事業収益、寄付・協賛等の複数の財源確保の重要性を示し、継続団体の自助努力による収入増加の方策を具体的に示している。本報告書は、初めてアートプロジェクトを始めようとする市民や自治体職員を対象とした実践的なガイドラインとして作成されており、アート導入の意義説明から具体的な実施手順まで、包括的な手引きとなっている。