令和4年度補正現地社会課題対応型インフラ・システム海外展開支援事業 ウクライナ国 熱電併給近代化に向けた情報収集・要望確認・復興計画事業 報告書

掲載日: 2025年3月11日
委託元: 経済産業省
担当課室: 通商政策局欧州課
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令和4年度補正現地社会課題対応型インフラ・システム海外展開支援事業 ウクライナ国 熱電併給近代化に向けた情報収集・要望確認・復興計画事業 報告書のサムネイル

報告書概要

この報告は、ウクライナ国の熱電併給近代化に向けた情報収集・要望確認・復興計画事業について書かれた報告書である。2022年2月のロシア侵攻により、ウクライナのエネルギーインフラは深刻な被害を受けており、特に熱電併給設備への攻撃が激化している状況下で実施された調査である。

ウクライナは1991年の独立以降、欧州統合路線を推進し、EU連合協定の署名やDCFTA(深化した包括的自由貿易協定)の適用を進めてきたが、2014年のクリミア併合や東部情勢の不安定化により、ロシアとの関係は急速に悪化した。現在の侵攻により、同国のエネルギーセクターは壊滅的な打撃を受けている。

調査の目的は、ウクライナの熱電併給システムの現状把握と復興に向けた課題の整理であり、日本工営エナジーソリューションズ株式会社と住友商事株式会社が実施主体となっている。エネルギー戦略ESU2050では、2050年までに電力需要の大幅な増加と再生可能エネルギーの導入拡大を目指しており、化石燃料依存からの脱却が重要な課題となっている。

ウクライナのエネルギーセクターは、国営企業が中心的役割を果たしており、天然ガス部門ではNaftogaz、電力部門ではUkrenergoが主要事業者である。熱供給事業については、設備の老朽化と効率の悪さが深刻な問題となっており、特に都市部の集中暖房システムの近代化が急務となっている。

本調査では、既設熱電併給設備の更新検討を行い、日本の技術を活用した協力対象事業の検討を実施している。具体的には、キーウ市やハルキウ市の熱電併給プロジェクトを対象とし、ガスタービンコンバインドサイクルシステムの導入による効率向上と環境負荷軽減を提案している。また、将来的な新エネルギー技術として水素やアンモニア燃焼技術の応用可能性についても検討を行っている。

事業実施の枠組みについては、JICA円借款やJBIC融資等の日本の開発援助機関の資金活用を検討しており、ウクライナの復興支援における熱電併給設備近代化の意義と今後の課題を整理している。