令和6年度中小企業における金融支援策の政策効果検証事業調査報告書

掲載日: 2025年4月21日
委託元: 経済産業省
担当課室: 中小企業庁事業環境部金融課
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報告書概要

この報告は、新型コロナウイルス感染症対策として実施された実質無利子・無担保融資(コロナ融資)の政策効果について定量的に検証した報告書である。政府系金融機関および全国の信用保証協会からのコロナ融資債権データと企業信用データベース(CRD)を連係し、法人のほぼ全てのコロナ融資データを分析対象とした包括的な調査研究となっている。

分析対象期間は2023年3月末までのコロナ融資であり、2021年3月末で民間コロナ融資申込が締め切られた時点までで全体の大部分を占めている。コロナ融資の利用企業は、借入実施時期、政府系か民間金融機関による融資か、新規融資か追加融資かという違いにより、企業属性が大きく異なることが判明した。初期段階では先行き不透明感から様々な業種で予防的に借り入れる企業が多く、その後の追加借入企業は対面型サービス業や製造業など継続的な資金需要のある企業が中心であった。

政策効果として最も明確に確認されたのは、分析期間全体を通じたデフォルト抑制効果である。2020年度において処置群(コロナ融資利用企業)のデフォルト率は0.14%であったのに対し、対照群(非利用企業)は1.32%と大幅な差が見られ、この傾向は2023年度まで継続している。また、コロナ禍開始直後の2021年度において期末従業員数の維持効果も有意に確認されたが、これは短期的な効果にとどまった。

一方で、売上高や収益面の指標については、事前属性を可能な範囲で調整しても、政策効果は概ねマイナスに留まった。ただし、特定のセグメントでは良好な効果も見られ、特に少額・短期融資を受けた企業群やコロナ禍前の低信用力先では相対的に強い政策効果が確認された。対面型サービス業は初期の業績悪化が著しかったものの、デフォルトを回避して乗り切った企業は2023年度には他業種と同程度の政策効果を示している。

副次的効果として、コロナ融資が設備投資を促進する効果も確認された。これは本来の資金使途ではないが、資金繰りに目途がついたことで設備投資資金が確保できたものと分析されている。一方で、追加借入や借換を行った企業群、民間コロナ融資終了後も借入を継続した企業群では、事後的な回復が遅れる傾向が見られた。

これらの分析結果から、今後の緊急避難的政策に対する含意として、期間を区切った運用による政策資源の効率的活用、低信用力先やショック影響を強く受ける業種への集中的資源投入の可能性、追加借入企業に対する金融機関による丁寧な審査と融資後モニタリングの制度要件化などが示唆されている。