令和6年度地域における自走可能な事業承継支援体制構築事業成果報告書
報告書概要
この報告書は、令和6年度に中部経済産業局管内における自走可能な事業承継支援体制構築について実施された調査研究事業の成果をまとめた報告書である。我が国中小企業では経営者の高齢化が進み、70歳以上の経営者が過去最高レベルに達している一方で、事業承継が進まず休廃業の加速化が懸念されている状況を受け、地域レベルでの自走可能な支援体制構築が急務となっている。
事業では愛知県岡崎市、蒲郡市、岐阜県関市、三重県四日市市、名張市、富山県高岡市、石川県小松市の7自治体を選定し、各地域の特性に応じた多様な支援モデルの確立を目指した。選定自治体は既存の創業支援体制を活用しつつ、第三者承継支援の強化や支援機関間の連携体制構築を図ることを目的としている。
先進事例調査では愛知県豊橋市、兵庫県豊岡市、秋田県北秋田市を対象とし、成功要因として地域課題の把握と内発的動機、既存施策の戦略的活用、支援体制の構築と役割分担が重要であることが明らかとなった。特に豊橋市では13の支援機関による「とよはし事業承継ひろば」を創設し、包括的な支援体制を実現している。
実証事業では各自治体において事業者向けアンケート調査とヒアリング調査を実施し、事業承継に関する課題や求める支援策を把握した。調査結果から、市が相談窓口を設置することで、これまで相談先に悩む事業者の受け皿となる可能性が示された。また商工団体の多くは事業者の廃業を退会届の際に知るという状況であり、早期の情報把握が課題となっている。
事業承継支援における自治体の役割として、地域を面的に俯瞰し事業者がアクセスしやすい立場から早期発見・対応を行うこと、支援機関間のハブ機能を果たすこと、各種支援機能を活用した経営面での支援などが期待される。自治体が事業承継支援に関与することで、自らのニーズ収集のみならず他支援機関の情報収集能力をアシストする効果も見込まれる。
本事業を通じて、地域における多くのプレイヤーが支える自走化された支援体制の重要性が確認され、自治体、商工団体、金融機関などの地域支援機関が事業承継・引継ぎ支援センターとの連携により事業承継ノウハウを蓄積し、支援リソースの裾野を拡大していく必要性が示された。
