令和3年度エネルギー需給構造高度化対策に関する調査等事業(貸事務所業ベンチマーク制度における省エネポテンシャル推計ツールの運用の在り方等に関する調査)調査報告書
報告書概要
この報告は、貸事務所業ベンチマーク制度における省エネポテンシャル推計ツールの運用改善について書かれた令和3年度の調査報告書である。省エネ法のベンチマーク制度は平成20年に導入され、平成28年度に業務部門へ拡大された制度であり、エネルギー基本計画では中小企業支援強化を重要施策として掲げている。令和2年度には貸事務所業のベンチマーク指標見直しが実施され、省エネポテンシャル推計ツールによる省エネポテンシャルが省エネ法執行上勘案されることとなった。
令和元年度の調査により、推計ツールには動作検証不足によるソフトウェアエラー、使い易さの不足、省エネ計画への活用困難という三つの主要課題が明らかになった。令和元年度調査では動作検証の実施、入力マニュアル改善、省エネ効果の大きな対策提示、基準階緩和入力による負荷低減を実施したが、省エネ計画への活用不十分、計算時間・メモリ不足、ツール改良の必要性という未実施の改善点が残されていた。
本調査では、これらの改善点を優先度に応じて分類し、重要度の高い項目について仕様改善を実施した。改善内容は未実施省エネ対策を実施した場合の計算追加とExcel2019対応、情報処理機能の最適化による計算時間短縮とメモリ消費削減、固定値更新および全対策後の省エネポテンシャル修正の三つに大別される。未実施省エネ対策の計算機能では、最大5ケースの省エネ対策を設定可能とし、各対策ケースのエネルギー削減量と省エネポテンシャルを計算して比較表示する機能を追加した。
情報処理機能の最適化では、計算条件入力機能と省エネポテンシャル計算機能の分割、ESUM計算用シート経由の廃止による直接入力データファイル生成、不要データの出力中止により、メモリ消費削減と計算時間短縮を実現した。固定値の更新では、空調・照明負荷原単位や高効率熱源機器COPを現状に則した値に更新し、全対策後の省エネポテンシャルをゼロに修正することで、事業者の理解向上を図った。動作検証では有識者2名から指導を受け、システム設計書等の整備、障害調査、動作検証評価を実施した結果、特に問題のない結果が得られた。改善された推計ツールとマニュアル類は省エネルギーセンターのホームページで公開され、貸事務所ビルと自社使用事務所ビルの省エネ計画検討ツールとして活用される。
